That Why I Pedal No.01

「That Why I Pedal」は自転車と共に生き、自転車に乗る喜びを伝える仕事をしている人に焦点を当てる特集記事です。それぞれ異なった価値観を持ちながら、自転車を愛する魅力的な人物と、彼らの言葉と彼らの自転車を紹介していきます。

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日本随一の品揃えと高品質なオリジナルプロダクツで多くの人々に愛される幡ヶ谷のBLUELUG。日本のピストブームの火付け役ともなったこのお店には他の自転車ショップとは全く異なる特徴があり、そこを支える個性豊かなスタッフたちのアイデアやセンス、そして並々ならぬ努力によってお店のアイデンティティーが確立されお客様からの信頼を獲得しています。
BLUELUGだから買えるもの、BLUELUGだからできること、BLUELUGにしか任せられないこと、、、その核心に迫るためBLUELUGの中心メンバーに話を聞きに行きました。

第一回目はBLUELUGが始まった初期の段階からお店に入り、現在では幡ヶ谷店のまとめ役として勤務しているKOROさんにお話を伺いました。

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Loop Magazine(以下 L):どのような経緯でいつ頃からBLUELUGで働いていらっしゃるんですか?

KORO(以下 K):僕が入社したのはBLUELUGができてまだ一年くらいの頃です。なんで僕が入ったかというと僕が通っていたBARのオーナーがBLUELUGの店長と知り合いだったんですよね(笑)。それまでももちろん知っていたんですけど、BLUELUGって自分にとっては憧れの店って感じだったんです。

L : 憧れっていうと?

K : 自分はその頃ピストに乗っていて、その当時すごい人気でメッセンジャーとかやってたわけじゃないけど友達と集まってどっか遠くに行ったり、ピスト乗りの友達ってたくさんいて。
その友達の中でもBLUELUGってとても人気があって特別な存在だったんです。
だけどたまたま行ってたそのBARでBLUELUGのスタッフの人が自転車の整備士の資格に受かったってことでパーティをやってて。
その時僕もそこに参加してたんですけど、そこで初めて社長とお会いして話すことができたんです。
そのあと自分がBLUELUGで働きたいって思いを社長に伝えたところ働けるようになったんです。

L : それじゃあ遊び場というか、普段の生活の中ですごく自然な形で出会ったんですね。

K : そうです。気づけばもう7年になりますけど(笑)。
僕の後のスタッフも同じような感じで、例えば縫製を担当しているマックス(BLUELUGでバックの縫製デザインを担当している中山氏)も店に遊びに来ていたお客さんでしたし、みんなそういう感じなんですよ(笑)。
今うちで通販用の写真や卸先に向けて発信する自転車のアーカイブなんかを撮ってもらっているNB君も同じような感じで入社してきたんですけど、初めは写真をやっていたってわけではなかったんです。
だけど店で組んだり作った自転車をきちっとアーカイブに残したいってなった時、彼に写真を勉強してもらってその写真を任せたんです。もちろん独学で(笑)
そしたらその後どんどん上手になって、彼の写真がすごくいいねって言われるようになってきたんです。
そしたらその後僕たちスタッフも良く見るRadavist(http://theradavist.com/)ってサイトの中で彼の写真が使われるようになったりして。もともとはレコード屋さんで働いてたんですけどね(笑)。

L : じゃあもともと知ってて、、っていう人が多いんですね。やはり感性が合うっていうのも重要じゃないですか?

K : そうですね。今一緒に働いてる仲間はそこが合ってるんでしょうね。

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L : その後はどんな流れでしたか?

K : 初めは本当に小さいスペースでやってて、それこそ今の店の4分の1くらいの大きさのスペースでやってたんです。
店舗としてはめちゃくちゃ小さかった。
けどその頃ピストを扱うお店ってほとんどなくて、その中でうちは貴重な情報源としての役割も担っていたんです。
だからお店は小さくてもすごくたくさんの人が来てくれました。
海外からも来たし、いろんな人が自転車を買って行ってくれた。
その後その近くに少し大きなスペースが見つかってスタッフも2名増えたんですけどすぐに手狭になって、そのあとここに移ってきた感じですね。
その後ここでも手狭になり、さらに人も増えたので新たに上馬に店を構えることにしたんです。
上馬店は幡ヶ谷と違うコンセプトのもとでやろうってことになって、少し上級者向けのマニアックな品揃えがウリのコアな自転車乗りに向けてやろうってことになったんです。
初めはそこもすごく小さくて民家の二階みたいなスペースでやってたんですけど、すぐにそこより大きいところに移りました。
スタッフもさっきみたいな経緯で増えていって、以前上馬店だったところには現在はペイントスタジオを置きCook Paintworks (http://cookpaintworks.com/)を運営しています。

L : その間約8年ですけど、あっという間だったんじゃないですか?

K : そうですね(笑)、ダーーーっというかんじでした。今は人数も増えて場所も落ち着いたんですけど、以前は1年に1回必ず引越しするって感じでしたね。すごい慌ただしかったです。
ただすごくいろんなことが面白くて、実際個人のお店で働く経験は初めてだったし、自分たちで手探りでいろんなことに挑戦していくっていうのがすごく楽しかった。
仕事とプライベートがごっちゃになったような感覚ですけど、毎日真剣にお店のこと、自転車のことばかり考えていました。

L : 実際お客さんとのコミュニケーションも普通のお店とは違いますよね?お友達がお客さんだったり、お客さんが友達や仲間になったり。

K : そうですね。たくさんお店に来てくれる人とは仲良くなれることが多くて、一緒に自転車乗りに外に出かけたり、何か祝い事あればこちらのパーティにも誘ったり、お客さんの方にも行ったり。
一緒に自転車乗るって言ってもそれだけじゃつまらないので、どこかに一緒に出かけてみんなで食事したりお酒のんだりする機会を作ったりするんです。
たしかにそういうことって他のお店じゃやってないですよね。

L : この8年間順調にお店は成長してきたように見えますが、何か大きな問題や壁にぶつかったことは無かったんですか?

K : 大きな問題というのは無かったかもしれませんが、やはり何か物事を起こした時、その結果が自分たちの頑張り次第で大きく変わるということを学びました。
僕たちのすごくいいところはそういう結果になってしまった時、会社のせいだとか、何か別の原因があったせいだって考えないんですよ。
例えば、僕は時々自分の企画としてBluelugのTshirtやグッズのデザインやプロデュースを行うことがあるのですが、そういった物作りをした時もプロモーションや告知をしっかりしなければいい結果は出ない、、、当然ですよね。
けどそういったことをみんなが自分のこととして考えられるんです。

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L : Bluelugでは自分らで作り、直し、仕入れ、売る、そしてコミュニティーも持っている。それって特別なことだと思うのですが。

K : そうですね。実際入社する前にその人が何がしたくて、何ができるのかはわかっているのですが、同じメカニックでも三者三様で好みも違えば、持っている知識やスキルも違う。
その人の持っていることに対して適切なもので力を発揮させてあげることのできる環境は整っていると思います。
修理ひとつとってもお客さんが持ち込む自転車も多種多様なので、依頼を受けた自転車が好きそうなスタッフ、その手のバイクが得意なスタッフ、趣味が合う、関心がある、そういうスタッフに任せた方が結果的に良くなるんですよ。

L : そうですか。とても良い環境で仕事ができるんですね。オリジナルのプロダクツについても同じことが言えるんでしょうか?たくさん自転車に乗る立場だからこそ見えてくる必要性を反映させていたりしますか?

K : そうですね。
やはり自分たちが求めているものを自分たちで作ってみようという部分はありますよね。
もともと社長がそういった考えの人なんです。だから自然とそういう人間が集まってきたのかもしれません。

L : カバン以外にもオリジナルのプロダクツを作っていますか?

K : 他にもいろいろやっていて、オリジナルのプリントを入れたTSHIRTや、パンツも作っています。
パンツは自転車に乗る人の目線で作られていてストレッチ素材を使ったり、シェープも独特で普通のパンツが持っている自転車に乗る際の小さな問題を解決するようなそんなギミックが施されています。
アパレルのプロダクツもそれを専門にやってるスタッフがいて、デザインから試作まですべて社内で行い、生産だけ外に任せています。

L : 自社製品のファンっていますか?

K : はい、おかげさまでたくさんいらっしゃいます。
うちはアパレルをメインでやっているわけでは無いのでその部門でそこまでガツガツ利益を追わなくてもいいので意外とリーズナブルな価格で提供できるんです。
気の利いた、動きやすかったり着心地の良いものは作るけど、消耗品だと思うので古くなったら買い換えるって事ができるようなそんな価格設定を心がけています。

L : そうですか。じゃあ仕入れるものに関してはどうですか?Bluelugらしい品揃えみたいなのを意識してると思うのですが、そのセンスのルーツってどこから来てるんでしょうか?

K : うちのメンバーはアメカジとかが好きだったり、アメリカのカルチャーに大きな影響を受けてきた人が多いと思います。特に社長はサンフランシスコの自転車やメッセンジャーのカルチャーに傾倒してきた人なのでサンフランシスコやカリフォルニアのシーンや感性を意識してるところは大きいと思います。とは言っても自然な感じですけどね、NYとかヨーロッパの感覚と違ってけっこうゆるい感じですし。

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L : 話は変わるのですがKOROさんの自転車はどんな感じですか?

K : 年々変わってきてるけど、今は3台持ってます。
ロードバイクは奥さんとツーリングに行ったりするのでそういう時に使うスペシャルなやつをテキサスの「ICARUS」(
http://icarusframes.com/)っていうブランドに直接注文してオリジナルを作ってもらったんです。
あとSURLYのファットバイクを持ってて、あの極太のタイヤのやつです。
クランパスっていうんですけど普通のMTBより太いタイヤがはけるんです。
けっこう重いんですけどこれだけタイヤが太いのでガツガツどこでも豪快に走ってくれるんですよ。
そいつでMTBのレースとか出たりした事もあります。
草レース的な感じなんですがギアなしのMTBで山道を10km走るっていうけっこうハードな内容で(笑)白馬のゲレンデを走るんですが、林道やゲレンデをこのファットバイクで走ると、安定感もありかなり気持ちが良いんですよ。
もう一台はFAIRWEATHER(https://store.bluelug.com/bicycle/fairweather.html)のピストを持っています。
一台は固定ギアがが欲しいっていう理由なんですけど。あとは子供ができたんで、子供と一緒に動けるママチャリのかっこいいやつを組みたいなって思っています。

L : 今日はどのバイクで出勤されたんですか?

K : 今日乗ってきたのはこのICARUSのツーリングバイクなんですが、このブランドはフレームをカテゴリーではなく用途からイメージして設計してくれるんです。
だからこのフレームも作ってもらう前に僕から「こういう用途で、こんな感じで乗りたくて、色はこうで、、、」なんていう具合にいろいろ要望を伝えるんです。
もちろん体のサイズとかも。そっからビルダーが一から手作りで作ってくれる。
世界に一台しかない自転車ができあがるんです。決して安い買い物ではありません。
ですがじじいになっても乗れると思います(笑)そういう自転車が欲しかったんです。

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KOROさん長時間にわたるインタビューありがとうございました。お話を聞かせていただいた後、Bluelugのスタッフ一人一人がお店を愛し、自分にしかできない仕事をするために自由に、そして時にはタフに日々がんばってやってきたんだという事が伝わってきました。Bluelug主催の誕生日会や何かのお祝い事には100人以上の人が集まることもあるそうです。自分たちの仕事を愛し、そして彼らを愛する友達やお客さんに恵まれ設立から8年以上経った今でもお店には毎日たくさんの人がやってきます。そんな暖かく、最高にクールな自転車屋さんBluelugに足を運んでみませんか?

次回はBluelugのメカニック担当「MATSU」さんが登場します。

Inteview : Kenshiro Ando
Photo : Yu Takahashi

2015.09.25
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